路線関係(交流電化)

国鉄の交流電化区間は、北海道、東北、北陸、九州に偏っています。いずれも昭和30年代から電化された区間です。
簡単に説明してしまうと、電気設備が高コストで車両が低コストである直流電化は列車本数の多い区間に、電気設備が低コストで車両が高コストである交流電化は列車本数の少ない区間に採用されたということです。

交流電化区間

交流電化区間

交流の周波数は、東日本が50Hz、西日本が60Hzとなっています。
国鉄では1955(昭和30)年に仙山線の仙台−作並間を試験線区に選び、50Hz交流電化区間での車両と地上設備の総合試験を行い、1957年から同区間で営業運転を開始します。また、60Hz区間の北陸本線田村−敦賀間も同年に営業運転を開始しました。
一方で、これまで相当距離が直流電化されていた東海道・山陽本線、中央本線、信越本線の延長部分には直流が選択されています。そのため直流と交流との境界が発生し、車両運用にも制限が生じる結果となりました。
なお、仙山線や奥羽本線など、一旦直流電化された区間を、交流電化に改めた事例もあります。

直流電化と交流電化の違い

直流電化
直流電化

直流電化の場合、交流の商用周波を変電所で直流1,500Vに変圧して架線に送ります。直流1,500Vは電圧が低いため送電ロスが大きく、変電所の数が多く必要になり、結果的に地上設備のコストが高くなります。
一方で、車両は直流で送られた電気で直流の電動機を作動させるため、製造コストは低くなります。

交流電化
交流電化

交流電化の場合、交流の商用周波を変電所で20kVに降圧して交流のまま架線に送るため、熱損失などの送電ロスが少なく、き電線も不要になるなど地上設備のコストは低くなります。
一方で、車両は交流電気を直流変換器(変圧器)で直流に変えて直流の電動機を作動させるため、車両側のコストは高くなります。

交直セクション

電化区間が交流のみで独立している北海道を除くと、交流区間と直流区間の境界がどこかでできてしまいます。
これを交直セクションと呼びますが、大きく分けると、駅構内などで停車中に切り替えを行う「地上切替方式」と走行中に切り替えを行う「車上切替方式」に分けられます。

地上切替方式
東北本線 黒磯駅(1959〜2018)
交直セクション

東北本線の黒磯駅では、駅構内を直流と交流で切り替えることができました。上野からの直流電気機関車が到着する際は構内を直流にし、機関車の引き上げ後に交流に切り替えます。その後に交流機関車が入線し、連結後に発車します。
(2018年に黒磯駅北側に交直セクションを移設しました)

間接切替方式
北陸本線 米原〜田村間(1957〜1962)
交直セクション

北陸本線の田村〜敦賀間は1957年に交流電化されました。米原で接続する東海道本線が既に直流電化だったため、米原からの交流電化にはなりませんでした。
この時点では交直セクションではなく、この区間だけ蒸気機関車に付け替える間接切替方式が採られました。

車上切替方式
北陸本線 米原〜田村間(1962〜1991)
交直セクション

間接切替方式であった米原〜田村間は、1962年に東海道線と同じ直流で電化されます。坂田〜田村間に交直セクションが設けられました。
特急形電車や急行形電車は交直両用の新造車が投入され、直通運転を開始します。客車・貨車はこれまで通り、米原と田村の2か所で機関車の付け替えが行われ、交直セクションの通過には、蒸気機関車(後ディーゼル機関車)が用いられました。
(1974年の湖西線開通時に、交直両用機EF81により直通運転化されました)

常磐線 取手〜藤代間(1961〜)
交直セクション

常磐線の場合は、交流電化当初から近距離電車や電気機関車も交直両用となり、すべての列車が上野から水戸方面に直通運転可能となっていました。
直流区間の取手までが国電区間となっており、交流区間に直通するのは、中距離列車のみです。

山陽本線 門司駅北側(1961〜)
交直セクション

山陽本線では、関門トンネルを越えて門司駅の北側までが直流で、交直セクションを挟んで門司駅構内から交流になります。
電車は多くが本州と直通するため交直両用となっています。一方、機関車は関門トンネル専用のステンレス製の交直両用機EF30が用意され、下関〜門司間のみはこれに付替えて運転します。
九州島内の機関車は、交流専用機となっています。

北陸本線 糸魚川〜梶屋敷間(1969〜)
交直セクション

北陸本線は米原〜直江津間の路線ですので、交流電化の東端も直江津のような気がしてしまいますが、糸魚川が交直セクションになります。1965年に糸魚川までの交流電化が完成した後、糸魚川〜直江津間は1969年に直流電化となりました。
直江津が信越本線により既に直流電化されていたことと、新潟県を交流電化する場合50Hzとなってしまうなどの理由が考えられます。
交直セクションが糸魚川駅の東側にあるため、直流車両の乗り入れはありません。この区間で使用するため、交直両用のEF81形電気機関車が新造されました。

交流電化が進められた理由

直流電化のデメリット

一般の送電網はすべて交流なので、直流電化の場合、直流に変換するための変電所が必要になります。国鉄では15〜20kmごとに変電所を置くのを原則としていますが、運転頻度の高い都市圏ではより多数の変電所が必要になります。変電所で受電した特高圧交流を変圧器で降圧し、さらに回転変流器、水銀整流器などにより直流1500Vに変換(整流)して架線に給電します。
また架線電圧が直接電動機に加えられることから、電動機の電気絶縁に制限されて架線電圧を高くとることが出来ません。電車が多数走る都市圏では、電圧降下を防ぐため、き電線の増設も必要になります。
結果的に、直流電化の場合、変電所や架線に要するコストが高くつくと考えられていました。
(文献B5801のP.523)

交流電化のメリット

一方交流電化の場合、商用周波の50Hz、60hzを直接使用し、架線に送ることで、変電所には最低限の変圧器が必要になるだけで、低コストで建設、維持が可能です。交流は変圧器で簡単に変えられるため、車両に変圧器を搭載して電動機に送ることが可能になります。結果的に、変電所にも架線にも設備は軽装で済むと考えられます。
(文献B5801のP.523)

主な参考文献
  • B5801 「鉄道辞典(上巻・下巻)」(1958)日本国有鉄道
  • F9704-1 手塚一之(1997)「交流電化開業40年」(鉄道ファンNo.432)
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“ゲタ電”の頃