車両の向き
路線に「上り」「下り」の向きがあり、列車編成に「上り向き」「下り向き」の方向が決まっています。そして、個々の車両にも同様に「上り向き」「下り向き」があります。
総括制御に必要なジャンパ連結器の接続や、検修面での機器配置の統一性などの観点から、車両を連結して編成を組む場合、車両の向きを固定することは重要な要素になります。
編成内での車両の向き
電車を連結して編成を組む場合、「上り向き」には「奇数車」を、「下り向き」には「偶数車」を連結するのが基本です。これらは「奇数設計」「偶数設計」とも呼ばれます。
編成内での奇数向きと偶数向き
旧型国電では、番号の末尾の数字で偶数車と奇数車を分けるのが基本です。
しかし、横須賀線のクハ47は番号に関わらす全車が下り向き、関西のクロハ59は番号に関わらず全車が上り向き、などの例もあります。また、その後の配置転換や改造によって、番号と向きが合わなくなる事例も多々あります。
新性能電車の場合は、形式の1の位が向きを表すのが一般的です。
車両の向きと奇数車・偶数車
奇数車は「上り向き」、偶数車は「下り向き」が基本になりますが、それぞれ床下機器の配置などが逆になっており、編成を組んだ場合に機器配置が一致するようになっています。
偶数車と奇数車の違い(上から見た図)
偶数車(下り向き)
奇数車(上り向き)
偶数車と奇数車では、運転台の向きを基準にすると床下機器の配置が左右逆になりますし、床下機器を基準にすると運転台の位置が逆になります。
基本は、海側(東海道本線を基準にした太平洋側)に空気系統を、山側(海側の反対側)に電気系統を配置します。電車の運行が始まった京浜線、横須賀線、京阪神間いずれも海側が南になり、日が当たって加熱される側に電気系統を配置することを避けたものと思われます。
偶数車の一例
クモハ60056
撮影:信濃大町駅(1978.3.27)
クモハ60806
撮影:富士電車区(1981.1.5)
偶数車の左右をそれぞれ前位側から見た写真です。
床下機器を見ると、進行方向右側(1-3位側)に電気系統があり、小さな四角い主抵抗器が並んでいるのが目印になります。進行方向左側(2-4位側)に空気系統があり、丸いコンプレッサーなどが目立ちます。
奇数車の一例
クモハ43015
撮影:伊那松島機関区(1981.4.3)
クモハ54001
撮影:伊那松島機関区(1978.12.31)
こちらは奇数車の左右をそれぞれ前位側から見た写真です。
偶数車と比べると、床下機器が左右逆側にあるのが分かります。
ジャンパ連結器
ジャンパ連結器の位置
総括制御を行うため、編成のすべての車両を電気的につなぐ必要があり、電車には制御引き通し線が通っています。これを車両間でつなげるのがジャンパ連結器です。
引き通し線は基本的に山側にあるため、各車両は、上り側の妻面の向って右側(つまり山側)にジャンパ連結器受けがあります。これが運転台側前面に付いている車両は上り向き車両(奇数設計車両)だと分かります。
クモハ12052
撮影:弁天橋電車区(1978.8.15)
逆に下り向き車両(偶数設計車両)は連結面にこれがつくことになり、運転台側前面にはありません。写真の車両は両運転台のクモハ12ですが、偶数車なので後位側の妻面にジャンパ連結器受けがあります。
方向による相違がない車両の箇所
偶数・奇数(下り向き・上り向き)といった要素とは関係なく、一定した車両部位の呼称について説明します。
車両の部位
前位・後位・1位側・2位側など
一般的に運転台のある側が「前位」です。この「前位」を「第1エンド」とも言います。
また、車両の四隅にも名称があり、前位方向を向いて右側が「1位側」、左側が「2位側」です。
運転台のない側は「後位」で、「第2エンド」とも呼ばれます。
1位・2位表示
1位側
撮影:鰍沢口駅(1981.4.26)
2位側
撮影:鰍沢口駅(1981.4.26)
車両の前位側がどちらなのかは、側面の隅にある数字で分かります。
「1位側」には①の数字が、「2位側」には②の数字が書かれています。一方で後位側の「3位側」「4位側」には数字は書かれていません。
両運転台車や中間車の前位側は、①②と書かれていることで判断できます。
母線と空気作用管
クモハ73024
撮影:山北−谷峨(1978.8.23)
パンタグラフ側の妻面には、左右に管があります。
向かって右側が母線(高圧母線)で、太い配管が1本あります。パンタグラフで集電した高圧電流を床下に引き込むための高圧線です。
向かって左側が空気作用管です。細い2本の配管です。パンタグラフを降下させる圧縮空気を供給する管です。
これらの管は、車両の向きに関係なくパンタグラフ側妻面に存在します。もっとも車体に埋め込まれて外から見えない場合もあります。
主な参考文献
- B0202 沢柳健一(2002)「旧型国電50年1」JTB