称号改正
1928(昭和3)年
1926(大正15)年には旧来の70馬力(45kw)以下の電動機がすべて廃止され、70kwと100kwの2種類に整理されました。また1927(昭和2)年には鋼製車が登場するなど、大きな変革の時期となりました。そこで、これまでの雑多な形式を統合、整理する目的で、1928(昭和3)年10月に国鉄所属全車両に対する車両称号規程が更新制定されることになりました。
この時期の主力であった木造車は、原則として1車種1形式にまとめ、電動車は出力の違いで、付随車は車体断面寸法により大・中・小に3分しました。
記号については、電動車の「デ」を「モ」としたのが大きな変更点です。
(1)主な変更点
これまでの客車の間に収められていた形式番号を、電車として独立させたのが大きな変更点です。従って電車のモハ32と客車のスハ32が存在するということも可能になりました。
記号については「デ」が「モ」に変わり、その後100年続く「モハ」という記号がここで登場します。
表8-3-1 昭和3年の称号改正の変更点
| 従来の形式称号 | 新しい形式称号 |
|---|---|
| 記号 | |
| 電動車=デ <例>デハ |
電動車=モ <例>モハ |
| 試験車=ケン <例>クケン |
職用車のヤに含める <例>クヤ |
| 番号 | |
| 4桁〜5桁の形式 <例>デハ6340形、デハ63100形 |
頭1字または2字を形式 <例>モハ1形、モハ10形 |
| 形式の1の位で電動車と付随車を区別する。 0〜4=電動車、5〜9=付随車 例:モニ3、モハ10、クハ6、サロ35 |
|
| 固有番号は0から始まる <例>デハ63100〜 |
固有番号は下3桁とし、001から始まる <例>モハ30001〜 |
| 運転台付車両は方向別に番号を振り分ける。 東海道線下り向きを偶数、上り向きを奇数。 |
|
(2)記号の変更点
現在でも鉄道会社によって「デハ」と「モハ」と異なる記号が使われていますが、多くの私鉄が国鉄を範とするため、この時国鉄が変更したことで二つのパターンに分かれる結果となりました。
表8-3-2 昭和3年の記号(電車関連)
| 記号 | 車種 | 語源 |
|---|---|---|
| モ | 電動車 | 「モーター」のモ |
正式な記号のほかに、代用車両に用いられる記号があります。
これは特に戦時中の仮改造車に用いられ、1953年の称号改正で本来あるべき形式に改称され、代用記号は消滅しました。
表8-3-3 代用記号(電車関連)
| 記号 | 意味 | 車種 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| クモハ | ク+モハ | 制御車代用の電動車 | クモハ63 |
| サモハ | サ+モハ | 付随車代用の電動車 | サモハ63 |
| サクハ | サ+クハ | 付随車代用の制御車 | サクハ65 |
| ヤサハ | ヤ+サハ | 職用車代用の付随車 | ヤサハ36 |
| 備考 | 「クモハ」は1959年称号改正以降の「クモハ」とは異なる | ||
(3)形式番号の変更点
上1〜2桁を形式、下3桁を製造番号に分けるという手法が、この時に確立されました。
今後増加が想定されない70kw木造車を雑形として1桁形式にまとめ、今後増加するであろう鋼製車は30以降に余裕をもって設定されました。
また、形式の1の位で電動車と付随車を区別するという手法もこの時に取られました。
表8-3-4 昭和3年の割当番号
| 区分 | 形式称号 | 具体例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 70kw木造車 | 1〜9 | モハ1 モユニ2 モニ3 モヤ4 |
中型短形(注1) |
| サハ6 | 小型短形 | ||
| 100kw木造車 | 10〜29 | モハ10 サロ18 サハ26 |
大型 |
| クハ15 クヤ16 |
中型短形・中型長形(注2) | ||
| サロ17 | 中型長形 | ||
| サハ19 | 小型短形 | ||
| サハ25 | 中型短形・中型長形 | ||
| 鋼製車 | 30〜 | モハ30 サロ35 サハ36 |
鋼製車 |
| 備考 | (注1)モハ1に中型長形、モニ3に小型短形あり。 (注2)クハ15に大型あり。 その後の新造車や再改造車などによる新形式は記載していません。 |
||
画像:所蔵写真(蒲田電車区)
電動車の記号はモに、製造番号は001から始まるように変わりました。
1928年の称号改正以降、鋼製国電の増備が続き、戦前〜戦中に電動車はモハ64まで、付随車・制御車はクハ85まで到達します。
その間に私鉄買収があり、国鉄編入車が大幅に増加します。その中で広浜鉄道(1936年買収)、信濃鉄道(同1937年)、富士身延鉄道(同1941年)の3社の車両は国鉄形式が与えられました。しかし木造車は20番台の空き番号、鋼製車は90番台に達し、残りの空き番号はほとんどなくなりました。
それ以降の戦時買収の車両については、改番は行われませんでした。
表8-3-5 買収国電の国鉄形式
| 区分 | 形式称号 | 元社名 |
|---|---|---|
| 木造車 | モハ20 | 信濃鉄道 |
| モハユニ21 | ||
| サハ26(2代目) | 富士身延鉄道 | |
| クハ29 | 信濃鉄道 | |
| 鋼製車 | モハ90 | 広浜鉄道 |
| モハ91 | ||
| モハニ92 | ||
| モハ93 | 富士身延鉄道 | |
| クハユニ95 | ||
| クハニ96 |
主な参考文献
- B5901 新出茂雄ほか(1959)「国鉄電車発達史」電気車研究会
- B9701 沢柳健一(1997)「旧型国電車両台帳」ジェー・アール・アール