バスターミナルと商業ビル

昭和の松電図鑑

撮影:岡谷駅(1988.11.23)

中央東線で長野県に入ると、主要駅の駅前に松電グループのバスターミナルや商業ビルが見られるようになります。特に1980年代から90年代にかけて、相当数の大型物件がオープンしました。
この時代、後に言われるバブル経済の真っ只中で、それに大店法の改正が輪をかけて、日本全国に大型店の出店が大きなムーブメントを起こしていました。
写真は、諏訪バスの車両を撮影したものですが、背後に「ララ岡谷」と「松電ストア」のロゴが付いたビルがあります。この右上の搭屋には「イトーヨカドー」のマークもあるのですが、写っていません。

松電バスターミナルビル
松電バスターミナルビル

画像:パンフレット(1997)

松本でやまびこ国体が開催された1978年、松本駅前に「松電バスターミナルビル」がオープンしました。
松本電気鉄道による7階建ての商業ビルで、キーテナントはイトーヨーカドー、1階にはバスターミナル、地下には食品スーパー(SM)の松電ストアが入ります。
駅前立地の総合スーパー(GMS)が得意なヨーカ堂では、弘前や富士吉田などでも同じようなターミナルビルに出店しています。最上階のレストラン街の出窓の造りなども、既視感があります。

ララ岡谷
ララ岡谷

画像:パンフレット(1997)

1984年には岡谷市の市街地再開発事業により、岡谷駅前に「ララ岡谷」がオープンしました。ここもキーテナントはイトーヨーカドーで、区分所有の諏訪バスがバス案内所を構えるほか、1階は松電ストアが入ります。
2001年にイトーヨーカドーが撤退、翌年にはアップルランド(←松電ストア)も撤退しています。

ベルビア(茅野バスターミナル)
ベルビア

撮影:茅野駅(1989.3.21)

ベルビア

撮影:ポンコツ屋赤木様(茅野駅 1988.8.22)

1987年には茅野市の再開発事業により、茅野駅西口に「ベルビア」がオープンしました。元々この地に店舗を構えていた諏訪バスと地元商店街が区分所有しています。キーテナントが甲府市の岡島(オカジマ)だというのは、諏訪地区の立地がなせる業でしょうか。
諏訪バスは「茅野バスターミナル」と名乗るバス案内所を持っています。1階に食品スーパーの「スワバスマイム」がありますが、これは松電商事(松電ストアの運営会社)が運営しており、実質的には「松電ストア」です。
2001年に岡島が撤退しています。

あやめシティ
あやめシティ

画像:パンフレット(1996)

1990年に明科駅前にオープンした複合店舗が「あやめシティ」です。ここは総合スーパーではなく、松電ストア明科店と隣接する着物店の金久が共同で新店舗を建設しました。
2021年に閉店して、現在更地になっています。なお、現在の「デリシア明科駅前店」は、別の場所です。

広丘ショッピングタウン「JOY401」
ジョイ401

画像:アルピコグループ(1993)

ジョイ401

画像:広丘ショッピングタウン リーフレット(1990)

1990年に広丘駅近くの国道19号線沿いにオープンしたショッピングセンターが「JOY401(ジョイしおいち)」です。地元で設立された広丘ショッピングタウンがデベロッパーで、松電ストアがキーテナントとして入店します。
これまでのショッピングセンターはイトーヨーカドーなどのGMSが大きな看板を掲げていましたが、ここは松電ストアが搭屋看板を掲げているのが印象的でした。(写真はアップルランドに名称変更後)
2005年に運営会社が倒産し、現在はデリシアが所有する「GAZA(ギャザ)」に生まれ変わっています。

塩尻大門ショッピングセンター
塩尻大門

画像:アルピコグループ(1993)

1993年に塩尻市大門町にオープンした塩尻市の再開発ビルで、キーテナントはやはりイトーヨーカドー、SMはアップルランド(1992年に松電ストアから名称変更)です。
駅前ビルではありませんが、この場所は中央西線がスイッチバックしていた時の旧塩尻駅があった場所のすぐ目の前です。
やはり、というか2010年にイトーヨーカドーが退店しています。

南松本ショッピングセンター
南松本ショッピングセンター

画像:パンフレット(1997)

大型ショッピングセンターの出店ブームに乗って、1998年に松電商事がデベロッパーになって建設した大型商業施設。キーテナントはやはりイトーヨーカドーで、SMはアップルランドです。
南松本駅からは多少離れていて、国道19号線沿いの郊外型店舗になっています。南松本周辺はダイエーや信州ジャスコも出店している激戦地でした。
長野県内からイトーヨーカ堂の運営する店舗が消滅するという2025年に閉店しました。

時代背景

バブル経済
ららぽーとカード

画像:ららぽ〜と(船橋市)リーフレット(1990頃)

1980年代後半から1990年代初頭にかけての好景気の時期は、後に「バブル経済」と呼ばれるようになりました。
この時期、土地や株式の価格が、長期にわたって上昇を続け、企業、個人問わず投資意欲が旺盛な期間でした。
不動産に投資すれば、その価格は間違いなく上昇し、投資効果は短期間で現われ、また投資するための資金の調達に対しても金融機関は門戸を広く開けていました。

大店法改正
つかしん

画像:つかしん(尼崎市)リーフレット(1990)

一方、これまで大型店の出店に対しての歯止めになっていた大規模小売店舗法(大店法)について、日米構造協議の中で廃止が求められ、1991年に地元の意見を聞く商業活動調整協議会(商調協)が廃止されました。
これにより、大規模ショッピングセンター(SC)の出店が容易になり、全国的な出店ブームへとつながるのです。

大型ショッピングセンターブーム
マイカル本牧

画像:マイカル本牧(横浜市)リーフレット(1989)

バブル経済と大店法改正は、不動産所有者、流通事業者、金融業者はじめあらゆる事業者にとって追い風となり、全国的に巨艦店と言われるような大型SCが誕生します。
1989年には、ニチイによる「マイカル本牧」(横浜市)、日本毛織、ダイエーによる「ニッケコルトンプラザ」(市川市)、扇屋ジャスコによる「ショッピングセンター・ノア」(野田市)が開業、その前年の1988年には三井不動産・ダイエー・そごうによる「ららぽーと船橋」が増床し「ららぽーと2」が開業しています。

バブル崩壊
モザイク

画像:モザイク(神戸市)リーフレット(1992)

1990年に株価暴落が発生、これを機に景気の後退が始まります。資産価格はこれまでと逆に下落が続きます。1991年には株価暴落で損失を被った顧客に証券会社が損失補てんをしていたことが発覚、1992年には「複合不況」という用語が出てきます。
しかし、企業の投資意欲は衰えず、計画中であった大型店の建設は続き、しばらくは力技での出店ラッシュは衰えません。

バブルの余韻
ノア

画像:ノア(野田市)リーフレット(1989)

バブルが崩壊したからといって、簡単にこれまでの世界観を否定できるわけではありません。
ちょうどそのころ、「南松本流通戦争」という言葉が長野県で使われました。
松本市の南側に広がる市街地の玄関口でもある南松本駅周辺に、大型店計画が相次いだのです。1993年には、信州ジャスコによる「ハイランドシティ松本」が開店、翌1994年にはダイエーによる「ハイパーマート」が開店します。乗り遅れるなとばかりに松電商事による「南松本ショッピングセンター」の事業が開始されるのです。

時代の転換
松電バスターミナル

画像:松本電鉄時刻表(2009)

時代の変化が明確になったのは2000年代に入る頃です。巨艦店の時代が終わると同時に、それを牽引してきた事業者にも限界が訪れました。
大手流通事業者では、これまで複数の巨艦店を手掛けてきたそごうが民事再生法適用(2000年)、マイカルが会社更生法適用(2001年)、ダイエーが産業再生機構の支援(2004年)と破綻が続きます。
また私鉄系の企業が得意とする駅前立地の大型店も曲がり角を迎えます。特に地方では、公共交通の衰退と駅前商業地の衰退がリンクします。
写真はキーテナントがイトーヨーカ堂の新業態「エスパ」に変わり、塔屋のサインも「7&i」に変わった松電バスターミナルビル。この後「アリオ」に変わるも、ヨーカ堂自体が迷走し、駅前立地のみならずGMS自体から撤退するという流れの中で、長野県からも全面撤退となります。

長野県内のチェーンストアについて

松電商事
松電グループの流通事業者で食品スーパー「松電ストア」などを展開する。長野県小売業売上ランキングではほぼ2位をキープしていた。
1992年に店名を「アップルランド」に変更。2000年に社名も「アップルランド」に改称。2016年には県内の同業者であった「マツヤ」を合併し、社名を「デリシア」に改称した。(「デリシア」の名称は高級食材を扱うSMとして店舗展開中であった)
現在、SMは「デリシア」、業務スーパーは「ユーパレット」(マツヤが展開していた同業態の店名)として県内に多店舗展開を続けている。
信州ジャスコ
長野県内を中心にGMS、SMを展開するジャスコ系列の流通事業者。長野県小売業売上ランキングでは常にトップを維持していた。店名は「ジャスコ」で本体と変わらない。ディスカウントストアの「ビッグバーン」も展開していた。
1999年にジャスコ本体に合併。
エス・エス・ブイ
西友系列のSMで、「長野西友」という社名だったが、1991年に愛知県のブイマートと合併し、「エス・エス・ブイ」に改称した。従って、長野県と愛知県、岐阜県などに店舗展開していたが、長野県内の店舗名は「西友」。長野県小売業売上ランキングでは、松電商事に肉薄する3位で時に逆転も見られた。
2008年に西友本体と合併。
イトーヨーカ堂
国内の大手GMSで、長野県内の店舗も本体が経営する。店名は「イトーヨーカドー」。(当ページでも店名は「イトーヨーカドー」、社名は「イトーヨーカ堂」もしくは「ヨーカ堂」と記載)
長野県内では、松電ストアとの共同店舗が見られたほか、マツヤは以前に提携により「ヨークマツヤ」と名乗っていた。
大型のGMSが不振となる中で、アップグレード業態の「エスパ」や大型SCの「アリオ」などへの業態転換も見られたが、2025年に長野県から完全に撤退した。
県内資本のチェーンストア
長野県内では、東信地方にツルヤ、北信地方にマツヤ、南信地方にニシザワ(伊那市)、キラヤ(飯田市)といった事業者があり、ほぼ各地域内を営業エリアとしていた。
1990年代中頃から、ツルヤが北信地方に進出するなどエリアの拡大を進めているほか、ニシザワはダイエーとの提携によるGMS「ベルシャイン」を複数店舗出店している点などは特筆に値する。

ページ上部へ戻る
メニュー

80s岩手県のバス“その頃”