続にっぽん奇行


「紀行文を書いてよ」と頼まれた気がして、2020年3月から半年ほどかけて連載した「にっぽん奇行」が完結して1年が経ちました。相変わらずこの国では、外出を自粛しながら静かに過ごす日々が続いています。
そこで、1回限りのはずだった「にっぽん奇行」の続編を書きながら、全世界の人々が心配なく暮らせる日々を待ちたいと思います。

(第2回)ごかぼうが食べたくなった


「ごかぼう」が食べたくなった。
もちっとした独特の歯ごたえで、米粒のようなものを主原料にして、周りに黄粉(きなこ)のようなものがまぶしてある筒状の食べ物だ。
小学生の頃、来客のお土産かなにかで食べたことがあった。多分和菓子なのだろう。和菓子といっても、お決まりのあんこは入っていない。主原料は米なのだ。
にっぽん奇行 しかし、その「ごかぼう」とは、そんな子供時代以降、出会ったことがない。
今も存在するのだろうか。そして、それはいったい、どこで作られ、売っているお菓子なのだろうか。米が原材料なのだから新潟だろうか。黄粉をまぶすという上品さから富山、石川だろうか。いや米を固めるというのは非常食の要素があるから、雪深い山形、秋田だろうか。
今、そういうことを知りたいと思ったら、即座に答えを導き出してくれる便利な道具がある。
平仮名で「ごかぼう」と入力すると、変換候補で「五家宝」と出てきた。こういう字を書くのか。
そこで、「五家宝」で検索してみると、意外にも埼玉県の熊谷などで生産されていることが分かった。
五家宝の主原料となる米は、おこし種を使っているそうだ。ただし、おこしのように固くはない。もちっとしている。それでも、主原料がおこしと同じだとすれば、関東地方の名産品だというのも頷ける。
埼玉県のお土産品なら、大宮駅で買えるだろう。大宮駅のエキナカには、お土産や食品を扱う店が集まったエキュートというエリアがある。調べてみると、熊谷の老舗がエキュートに店舗を構えていることが分かった。
さっそく大宮駅に行ってみた。ショーケースの五家宝を探しながら1周してみたけれど、見当たらない。店舗配置図を探し、再度行ってみると、確かに記憶していた店名があった。しかし、ショーケースに並んでいるのは、今時の消費者に力強く歩み寄ったスイーツ類だ。見つけられなかったわけだ。
五家宝がないかどうか、ショーウィンドウを睨みつけていると、店員がセンサーに反応したかのように、スイーツの営業トークを始めていた。聞く気もない。
私は、耳に入っていないトークがまだ途中であるにもかかわらず、不躾に「五家宝はないんですか?」と聞いてみた。
「五家宝は4日前までの予約制なんです」
店員は言った。五家宝は生ものなのか。そんなに消費期限の短い食べ物なのか。
にっぽん奇行 いや、多分、売れ行きのいいスイーツの方を売りたいんだろう。老舗がこうなのだから、私も40年以上の間、食べることはもちろん、見ることもなく過ごしてきたわけだ。
五家宝を食べる機会はいつになったら巡って来るんだろう。
本場の熊谷に行けば買えるかな。大宮から熊谷なら、そう遠くはない。そう考えてはみたものの、今日は縁がなかったと諦めよう。
(画像はほぼイメージで、本文とは関係ないものがほとんどです)

(つづく)


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