にっぽん奇行


もし「紀行文を書いてよ」と頼まれたら、どんな紀行文を書けばいいんだろうか。実際に頼まれたわけではないのだけれど、ちょっと心配になってしまったので試しに書いてみました。

(第13回)旅は出会いなんかじゃない

よく、旅は出会いだとか言う人がいる。しかし、せっかく一人きりで旅に出たのに、知らない人と新たなコミュニケーションを図るほど鬱陶しいことはない。
以前ラジオでインテリの女性タレントが、フランスではカフェとかショットバーとかのカウンターでも、知らない人と気さくに話をするのが当たり前だとかこいていた。はた迷惑な話だ。文化が違う。こっちは、駅そばとか牛丼屋とかのカウンターで、見知らぬ隣の人に話しかけたりしたら、昆虫を見るような目で一瞥されて、席を移動されてしまうのがオチだろう。 にっぽん奇行 そもそも、見知らぬ土地でハイになっているのは旅行者だけで、地元の人は日常生活を送っているだけなのだから。
もっとも、昔は列車での長旅というのが普通にあって、同じボックス席に座ると、「どちらへ行かれるんですか?」などという会話が弾んだりしたのも事実である。
今でも、よその土地に行けば、どうしても会話が必要になることはある。そういう時、よく聞かれるのが「どこからきたの?」と「何しに来たの?」だ。
それに対しては、「東京から来ました」と答えるのが最も無難な選択だと経験的に学んだ。誰でも知っている場所だし、東京からわざわざ来てくれたと嬉しがられたりする。ここで「岩手」とか「島根」とか「徳島」とか答えてしまうと、相手に十分な知識がなく、気まずい沈黙が続くことになる。
それでもなんとか「中尊寺までなら行ったことある」とか「あまちゃん見てたよ」とか言われるのはまだいい方。「ねぶた祭りのとこだよね」とか「最上川旅情はカラオケで歌うよ」とか言われた時は、ムッとしてはいけない。「東北って何にもないよね」とか「岩手は知らないけど、北海道の方?」とか言われるよりだいぶましだと思った方がいい。
そもそも、会話というのはキャッチボールだから、相手が知ってそうもないことを言った時点で失敗なのだ。向こうだって「そんなマイナーな地名言われても分からんがな」と困っているはずなのだ。こちらのコミュニケーション能力のなさが露呈しているだけなのだ。
そして、さらに困るのが、「何しに来たの」に対する答え。本当のことを答えても、大体相手に通じない。目線が宙に泳いだまま半笑いの表情で固まられたりする。
にっぽん奇行 学生の頃、海辺の町で「ツーリングに来ました」と話したら、「そう、釣りに来たの」と返されて、しばらくの間、釣りの話に花が咲いた。
なので、分かりやすいツボを選んで、「白浜のジャイアントパンダ見に来ました」とか「高知といえばカツオのたたきですよね」とか答えると、会話はスムーズになる。ただし、相手が「私が乗せてってあげますよ」とか「おいしい店知ってるから、電話しといてあげますね」とか言い始めると、その先が面倒になるので、そうならないように相手を見て話の内容を選ばなければならない。
(画像はほぼイメージで、本文とは関係ないものがほとんどです)

(次回の最終回につづく)


ページ上部へ戻る
メニュー

80s岩手県のバス“その頃”