にっぽん奇行


もし「紀行文を書いてよ」と頼まれたら、どんな紀行文を書けばいいんだろうか。実際に頼まれたわけではないのだけれど、ちょっと心配になってしまったので試しに書いてみました。

(第11回)ソーキそばでもなく泡盛でもなくミルクティー

那覇空港への着陸態勢に入った航空機から見下ろすと、そこにはエメラルド色に輝く沖縄の海が見えた。沖縄の海というのはこんなに美しいのだと初めて知った。
その日、私は沖縄に住む友人の結婚式に出席するため、共通の友人とともに沖縄に向かっていた。社会人になって10年ほど経った頃だ。沖縄を終の棲家と決めた友人の気持ちが分かるような気がする美しい海の色だった。
那覇空港に着くと、別の飛行機で向かっていたもう一人の友人と合流し、3人で那覇市内に向かった。まず最初の食事は、友人のひと言で「沖縄に来たらソーキそばでしょう」ということになった。
にっぽん奇行 確かにソーキそばは美味しかったし、夜に飲んだ泡盛もおいしかった。しかし、私にとって沖縄で忘れられないのは、それらを飛び越えて紅茶なのだった。
沖縄で紅茶と言うと、出川哲朗のネタを連想する人もいるかも知れないが、それとは全く関係ない。
ちなみに出川哲朗のネタというのはこんな話。
沖縄に行って、紅芋(べにいも)や紅豚(べにぶた)という名物を知った。ある店で紅茶というメニューがあったので「べにちゃ」という沖縄名物だと思って注文したら、普通の紅茶(こうちゃ)だったという話。これは、出川哲朗が話すから滑った話のようになるが、小話としてはよくできた話だと思う。
出川哲朗はともかくとして、私たちはチェックインまでの時間つぶしと久々の再会での近況報告などのため、ちょうど見つけた喫茶店に入った。私はコーヒーを注文したが、友人の一人はミルクティーを注文した。そいつは昔からキザな野郎だった。学生時代に旅行した時も、我々がアツアツの味噌汁の朝ご飯を食べようという時に、「たまにはトーストもよいかと」などと言うので、「トースト野郎」とあだ名をつけたくらいだ。
トースト野郎の話もともかくとして、やがて彼の元にミルクティーが運ばれてきた。それは、白いティーポットに茶葉とミルクを一緒に入れて煮立てた本格的なミルクティーだった。香ばしい紅茶の香りと牛乳の甘い香りが漂ってきた。自分の目の前に出された普通のコーヒーに比べて、なんと魅力的に映ったことか。ミルクティーを注文しなかった自分に後悔した。
にっぽん奇行 その後、友人の結婚式に出席し、他の懐かしい同窓生と再会したり、新婦の友人から沖縄に住まないかと勧められたり、同行の友人と首里城を見に行ったりと色々なことがあったが、そのほとんどの記憶は欠落している。ナントカビーチの脇をレンタカーで走った記憶があるが、テレビで見た風景との混同かも知れない。
そして、帰途につくため、我々はまた那覇空港に到着した。
飛行機が出るまで時間があったので、空港内の喫茶店に入った。
私は迷わずミルクティーを注文した。沖縄のミルクティーが飲める最後のチャンスがこの場所だ。
トースト野郎は、今度は普通にコーヒーを注文している。ミルクティーを頼めよ。
しかし、運ばれてきたミルクティーは、普通の紅茶で、市販のミルクパックとスティックシュガーが付属してきただけだった。
(画像はほぼイメージで、本文とは関係ないものがほとんどです)

(つづく)


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80s岩手県のバス“その頃”