もし「紀行文を書いてよ」と頼まれたら、どんな紀行文を書けばいいんだろうか。実際に頼まれたわけではないのだけれど、ちょっと心配になってしまったので試しに書いてみました。
(第6回)宇都宮餃子は酢で食う
宇都宮というのは、栃木県の県庁所在地である。そんなことは当たり前じゃないかという人もいるだろう。しかし、当たり前じゃない人も多い。関東在住の人でも、北関東3県がどのように並んでいて、それぞれの県庁所在地がどこなのかを正確に言えない人はいる。
今でこそ、「宇都宮線」と呼ばれるようになったが、以前は正式名称の「東北本線」と呼ばれていた。その東北本線の列車の終点の一つが宇都宮だから、宇都宮は東北なんだと思う関東人も多かった。
そんな宇都宮の名物として近年知名度を上げているのが宇都宮餃子である。水戸納豆よりも、まえばしtonton汁よりも、宇都宮の餃子なのである。

そのうちの1軒に入ってみた。店を選んだ理由は、空いていたからだ。
基本的にやる気の感じられないおばちゃんが出てきたので、ご飯と餃子のセット商品を注文した。本場の人は、ご飯と一緒に食べるのは邪道なのだと聞いたことがあるけれど、おなかが空いていたのだから、しょうがない。
おばちゃんが、「宇都宮餃子は、酢を多くして、タレはほとんどないほうがおいしいからね」と言ってきた。
でも私は酢が好きではない。酢豚も好きでないし、あんかけ焼きそばにも酢はかけない。だから家の冷蔵庫にも酢は入っていない。もっとも、酢を勧められてしまったからには、言うとおりにするのが、旅行者のマナーだろう。言われたとおりに食べたら、宇都宮餃子の本来の味が強調されているようで、おいしかった。
宇都宮から少し北に向かうと、黒磯に着く。今の若い人にとっては、黒磯の知名度というのはそう高くないのではないかと思う。でも、かつて黒磯は交通の要衝だった。東北本線の列車は、ここで必ず長時間停車したし、黒磯止まりの列車も多かった。

そんな黒磯の凋落は、東北新幹線の開業が原因だった。東北新幹線は、黒磯の一つ手前の東那須野駅に停車することになった。これまで急行列車も止まらなかった小駅だ。新幹線駅となるに伴い、塩原町の町名を取って、駅名を那須塩原駅と変えた。とばっちりを受けたのは、さらに一つ手前の西那須野駅も同じだった。那須高原の玄関口を奪われてしまったのだ。
しかし、平成の大合併は、そんな過去の歴史も消し去ろうとしている。今、黒磯市も、西那須野町も、塩原町も、新幹線の駅名から名前を取った那須塩原市として一つになってしまっている。
(画像はほぼイメージで、本文とは関係ないものがほとんどです)
(つづく)